コラム
馬の歯の治療をしていて質問される2つ目のことは、
Q.馬は歯の治療をしていて痛くないの?
A.鋭く尖った歯(エナメルポイント)のみを削り取るだけなら痛くありません。
そのような処置のことを、整歯(せいし)と呼びます。
大人しい馬には気持ちを落ち着かせる薬(=鎮静剤)を使わずに行えます。
エナメルポイントと潰瘍¹
引用:Principles of Equine Dentistry 2010
このような質問してくれる人は、
歯の治療=虫歯治療=歯をキュイーンという機械で削られて痛い
と言うイメージを持っていると思います。
しかし、馬の歯の構造を学び、どこを削っているかを知れば痛くないことが理解できます。
人の歯は、歯ぐきの外に出ている部位(歯冠)は非常に硬いエナメル質に覆われ、その中に象牙質、神経や血管がある部位(歯髄)で構成されています。
セメント質は歯肉より下の部位(歯頚~歯根部)で歯を覆っています。
※歯の硬さ エナメル質が一番硬く、象牙質、セメント質の順で軟らかくなる
子どもの虫歯は外側のエナメル質に穴が開き、歯の奥に感染と炎症が起きます。
治療には歯の奥まで削る必要がある為、痛みを伴います。
人の歯(健康)²
引用:歯内治療学第5版 2018医歯薬出版株式会社
人の歯(虫歯)²
引用:歯内治療学第5版 2018医歯薬出版株式会社
一方、馬の歯は歯外側がエナメル質で全て覆われてはいません。
上下で少し違いますが、エナメル質は内側に入り込んだ構造になっています。
馬の歯の構造³
引用:新 馬の医学書 2012緑書房
歯の硬さの違いによりセメント質や象牙質がエナメル質より簡単にすり減り、歯の表面は硬いエナメル質が所々に残った『ギザギザした状態』になります。
このギザギザを利用して馬は草を効率的にすり潰しています。
馬の上顎後臼歯表面
また馬の虫歯(齲歯:うし)の多くは青矢印や丸で示したエナメル質に囲われたセメント質の部分(Infundibula)に、セメント質の形成不全や酸によりセメント質部分が溶けることで⁴,⁵で小さな穴が開くことで起こります。
しかし、エナメル質で囲われたこの部分に神経は無いので穴が小さい間は痛くありませんし、特別な治療をする必要もありません。
馬の歯は人の歯より伸びるスピードが早いので特別な処置をしなくても歯の摩耗と共に穴が無くなることもあります。
人と馬の歯は構造的に違うところも多いですが、メンテナンスはどちらとも大切なので、定期的に行っていきたいですね。
次回は歯の構造的な異常について詳しくお話したいと思います。
参照文献:
¹:Principles of Equine Dentistry 2010
²:歯内治療学第5版 2018医歯薬出版株式会社
³:新 馬の医学書 2012緑書房
⁴:EDC Key Skills 1 (2018 May02-04)
⁵:Equine dentistry third edition 2011
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